合同会社VONTEN

-異世界を作り上げる-試行錯誤の製作過程とイベントにかけた想い。

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2026/01/27

扉を開ければ、絵本の世界へ

2025年5月24・25日の2日間。舞鶴赤れんがパークにて体験型謎解きイベント『リュミエールの不思議な絵本』が開催された。異世界を舞台に来場者自身がクエストをこなしながら物語を進めていく没入型のイベントである。

 

リュミエールの不思議な絵本

 

主催は大阪のイベント会社「株式会社アッシュ」。多数の出展者・パフォーマー・コスプレイヤー等が関わる中、私たちVONENは赤れんがパーク4号棟・5号棟の空間演出を担当させていただいた。

私たちに求められたのはただの装飾ではなく「異世界そのもの」を創り上げること。

 準備期間は約2ヶ月。予算も限られる中で、何を削ぎ落しどこに手間をかけるか。このnoteではその舞台裏と、私たちのデザインアプローチを記録する。

 

リュミエールの不思議な絵本 | 合同会社VONTEN

 

 

制作①:異世界の入口

 

異世界の体験は、入口で決まる。
まず私たちが意識したのは、「最初の一歩目で、世界に入ってもらうこと」

構想のヒントとなったのは、イベント前にチームで視察に訪れた国内屈指のテーマパーク・USJだった。
その中で印象的だったのは、USJ入口の「あえてゲートを狭くつくることで、くぐった後の空間の広がりを強調する」という演出。
狭い場所を通り抜けた瞬間、視界が開けることで一気に非日常の世界に入り込む。心理的にも身体的にも「世界が変わった」と認識させる強力なスイッチだな、と現地で体感。

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天井が他の建物に比べ低くなっている(右手にある入場ゲート)
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入場ゲートを抜けた先の道

この体験設計を応用し、今回のイベントでは巨大な“絵本の表紙”を模した入口を制作した。
ページをめくるようにその中へ入っていくことで、自分自身が物語の登場人物として物語に入り込んでいく。

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さらにその扉の奥には、高さ約180cmのトンネルを設計。背の高い大人なら少し身をかがめて通らなければならない。
その“くぐりぬけ”という行為自体が、異世界への導入として機能することを意図した。

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5号棟入り口扉の先にある絵本トンネル

少し屈んで絵本の中に足を踏み入れたその瞬間、来場者はもう、ただの観客ではなくなっていた。
自分が“物語のなかの一人”として歩き出す。そんな境界線を、このエントランスでデザインした。

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制作②:異世界の痕跡をデザインする

会場に足を踏み入れた来場者が、最後まで“異世界”の世界観に没入し続けるにはどうすればよいか。私たちが注目したのは、空間のなかにある些細な要素──什器や小物。それらが単なる装飾ではなく、「誰かがここで暮らしていたのかもしれない」と感じさせるような“痕跡”となることを目指した。

しかし大きな空間すべてを豪華に演出することは、限られた予算と準備期間の中では現実的ではない。だからこそ、まず私たちは「空間の粗密」を意識し、空間全体の配置を行い、そこに合う什器や小物を考えいった。

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3DCGを用いて空間全体の粗密の配置検討を行った。

そうした什器の演出にあたっては、限られた条件下でどのように素材を選び、どう“らしく見せるか”を徹底的に検討した。
まず素材の選定はすべて、手に入りやすく身近なものを活用することとした。段ボールや流木、卵パックなどどれも身近なものばかり。それらを加工し看板や装飾に再利用、まるで使いこまれた、その世界の痕跡が残るような制作を意識した。

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本物の古書が何冊も並んでいるように見えるけれど、すべて段ボールと印刷用紙で作られたもの。
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流木を組み立て完成させた異世界看板

一方で、形状の精度が求められる小道具には、オフィスにある3Dプリンターやレーザーカッターといった機材をフル活用した。たとえば、イベントのキーアイテム「ルミナスオーブの盃」は3Dデータをもとに立体出力、色を重ねて仕上げた。

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ルミナスオーブ製作中の様子。
置いてある金の盃は3Dプリントで制作。下の石像は断熱材で制作した。

小物や什器に込めたのは、作り込みすぎない、けれど確かに“何かがあった痕跡”のような空気。リアルさではなく、「そこに物語があったかもしれない」と思わせる余白を大切にした。
異世界の装飾を創り上げる、そう聞くと特別な技術を想像するかもしれない。けれど、実際の現場はもっと地道で、手のひらサイズの工夫の積み重ねだった。
「何をどう活かすか」を考える作業は、このイベント準備の中で大切な時間だったと思う。


小道具や什器の演出は、空間全体を支えるベースとなった。
そのうえで、来場者の記憶に残る「見せ場」をどこにどう設けるかもまた、私たちにとって重要なテーマだった。そこで来場者の動線上で印象的な体験を生むために力を入れたのが、フォトスポットの設計である。
単に写真映えするだけでなく、「ここで何かが起きていたかもしれない」と思わせる“背景”を意識してデザインした。

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USJ視察で見つけたハリーポッターの杖倉庫。奥にぎっしりと同じものが詰め込まれているだけで使い込まれた年季を感じる演出。これらも参考にしながらフォトスポットの空間演出を行った。
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会場入り口すぐのフォトスポット。
絵本をテーマに本に囲まれながら物語のあらすじに入り込むような空間演出を施した。

特に力を入れたのが、会場奥に設置したフォトスポット。横幅を大きく取り、オブジェクトの配置にもこだわった。前面には撮影スペースとして余白を設け、その隣にはテーブルとベンチを設置し、マルシェで購入した食べ物を楽しめるスペースも用意。これは、空間をただ“見て終わる”ものにしないための工夫だった。
写真を撮る、座って過ごす、誰かと話す。
そうしたアクションが連鎖することで、空間が“体験の場”に変わっていくことを目指した。

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会場奥のフォトスポット。荒廃した世界をテーマに、壊された石碑を配置した。

会場設営の際、配置図面と実空間のスケール感に圧倒される瞬間もあった。
「これは大きすぎるかもしれない」
「このスペース、もっと空けてよかったかも」
図面と実空間を照らし合わせながらの微調整も、直前まで繰り返した。
しかし、その“ギャップ”をどう無くしていくかが、空間全体を生きているかのように仕上げる鍵だったように思う。

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制作③:異世界文字が世界を深くする

エントランスで異世界の入口を演出し、什器・小物で生活の痕跡を作り込んだ私たちは、空間にさらなる“奥行き”をもたらすために、言語そのものをデザインすることに挑んだ。それが、会場内に広く用いた架空の文字「異世界文字」の導入である。

この文字は、アルファベットや数字に対応する記号が割り振られた独自のフォントで構成される、“読みづらいが、読み解くことが可能”な文字体系である。だが、何も知らずに目にした来場者には、まったく読めない未知の文字列として映る。この「読めないこと」が、来場者に違和感と好奇心を生み、立ち止まらせ、世界の厚みを感じさせる。

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左画像:異世界文字を使用したグラフィック
右画像:異世界文字一覧表
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会場内のゴミ箱分別も異世界文字で表現。イラストも添えることで世界観を保ちながら分別ミスが起こらないようにした。

しかし、実際にこの異世界文字を大量に使用するには、膨大な制作工数となり、通常の作業では到底追いつかないと判断。そこで「異世界文字変換機」というツールを開発。アルファベットの文章を入力すれば、即座に対応する異世界文字に変換することができるこのツールによって、デザイン作業のスピードは大幅に向上した。

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異世界文字変換器。このツールを用いて異世界文字に変換した文章を各種グラフィックに落とし込んでいった。

またこの異世界文字とそのツール作成は思わぬ副次効果もあった。イベント企画会社側でもこのツールを用い、ミニ謎解きコンテンツをつくったのだ。

 

つくりあげたデザインと仕掛けを自分たち以外にも活用してもらう。
今回の制作を振り返って強く実感したのは、「良いデザインを生むには、デザインする“ための道具”をつくる力も必要だ」ということ。単に最終アウトプットをつくるだけでなく、そのための道具からつくることで、デザインが自分たちの手から離れ、発展し進化していく様子をみれたことは大きな財産となった。

 

イベント当日

イベント当日。会場である赤れんがパークには、明らかに日常とは違う空気が流れていた。
リュミエールの音楽と共にイベントは始まり、会場入り口の扉が開くと、多くの来場者達が大きな絵本のモニュメントに驚いた表情を見せる。

印象的だったのは、来場者たちの“服装”だ。魔法使いのようなローブをまとった人、冒険者のような装備を身につけた親子──まるでこの世界の住人かのように、会場に溶け込んでいた。
私たちが演出したのは空間であって、衣装ではない。けれど、来場者の装いもまた、物語世界を支える大切な要素となっていた。

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異世界マルシェの様子       
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                  VONTENロブボール イベント初設置
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失われた絵本のページを探す来場者

 

段ボールで作られた本棚、流木で組まれた看板、石板のモニュメント──
そのひとつひとつが、参加者の物語の背景になっていた。
中には、異世界文字を指差して「これ、なんて書いてあるんだろう」とつぶやく子どもの姿や、フォトスポット背景に記念撮影をする人達の姿が。
イベント当日やその後にSNSで多くの参加者の反応もみることができた。

#リュミエールの絵本

感動ポイント。
酒場のボードに貼ってある依頼書?が全部しっかり書き込まれてる上に内容違う。
すごい。 pic.twitter.com/APPfqHpvjy

— SAORI.akaさな (@sana_fiction) May 25, 2025

そうしたひとつひとつの反応に、私たちは確かな手応えを感じることが出来た。
私たちが仕掛けた演出は、どれも「使われてこそ意味を持つ」ものだったと感じる。空間が“ちゃんと物語の中にあった”ことを、来場者が教えてくれた。

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最終章|物語が生まれる場所で

ここからは少しラフにこのイベントについて振り返ろうと思います。

今回のイベントは、VONTENにとっても大きな挑戦でした。
「異世界を創る」なんてなかなか普段言わないですが、実際やってみて分かったのは、
空間って“見た目”に加えて全体の“空気感”が大事だな、ということ。

段ボールでつくった絵本や、舞鶴の海辺で拾った流木を使った看板、スタイロを削り制作した石板など、自分たちの手で工夫を加え仕上げていきました。
それぞれの美術品に「誰かがここで何かをしていたかも」と思わせる空気を持たセルために細部までこだわり作りあげました。

制作中は「本当にこれで“異世界”になるのか…?」と不安もありましたが、
当日、来場者の皆さんの皆さんが会場の空気感を楽しんでくれている様子を見て、
あ、ちゃんと届いたんだな思いと嬉しい気持ちになりました。


会場では、入り口の扉で楽しそうに遊ぶ子どもや、クエストを解こうと協力しているご家族、
最高のコスプレをしてフォトスポットで写真を撮る方、マルシェで買ったご飯を片手に写真を撮っている親子の姿が印象的でした。

私たちが準備した空間の“楽しみ方”を超える方法を、来場者の方々で生み出してくれていたなと思いました。


このような挑戦的でたくさんの人を巻き込み、楽しんでもらえるイベントを舞鶴という場所で行えたことに大きな意味を感じました。
約10年前の私たちが学生の頃、舞鶴は何もない街と皆が口を揃えて言っていました。この現状は今でも大きく変わったとは言えません。それでもこうして少しずつ新たな企画を熱い気持ちを持って行う面白い大人達がいることは確かです。
地方だからでいることではなく、この場所だからできることを続けていこうと思います。


こうしてまた誰かの想像力をくすぐる場所を、舞鶴で増やしていけたら嬉しいです。

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VONTENメンバー

おわりに

VONTENでは今後も、空間づくりや演出を通して、体験そのものをデザインしていく取り組みを続けていきます。
このnoteが、私たちの活動の一端として、どこかの誰かの目にとまったら嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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VONTEN 広報部より

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住所 : 京都府舞鶴市北吸1039−13 赤れんがパーク 4号棟2階
電話番号 : 080-7258-6022


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